CAREER

人生に影響を与えてくれた2人の師|人生を豊かにした出会い #9

野村 勝也工学部電気電子応用工学課程 講師

私たちの人生は出会いにあふれています。みなさんは、どんな出会いが記憶に残っていますか? ここでは「人生を豊かにした出会い」をテーマに、関西学院の研究者のエピソードを紹介します。彼らの出会いや体験から“豊かさ”について考えてみませんか?

研究者としての自分にとって「EMC」(Electromagnetic Compatibility:電磁両立性)と、「トポロジー最適化」という2つの分野との出会いは大きなものでした。

EMCとは、「電子機器が他の機器に必要のない電磁的影響を与えず、かつ、自らも他からの電磁波によって問題が発生しない特性」のことを意味します。家でスマートフォンを使っているとき、電子レンジを使用するWi-Fiの通信が途切れることがありますが、それは電子レンジの発する電磁波が、スマホのアンテナが受信する電波に干渉することが原因です。近年では、自動車などにも多数の電子部品が搭載されるようになり、「他の電子機器を電磁波で攻撃しない、かつ、攻撃されても影響を受けない」ことを目指すEMCに基づく回路の設計が、電子機器の製造では必須となっています。

EMCについて最初に知ったのは、京都大学の3年生のときに参加した各研究室の研究内容を紹介するイベントでした。岡山大学から移ってこられた和田修己先生が、「和田研究室での研究内容には回路理論や電磁気学に加え、材料物性や半導体工学など非常に幅広い知識が必要になる」とお話しされたのです。どの専門にするか迷っていた自分は、それを聞いて、「和田研究室に行けば一つに絞らずいろいろな分野を学ぶことができる」と感じました。そして研究室配属後、当初はEMCとは異なる研究テーマを実施していたのですが、豊田中央研究所のインターンシップに参加してEMCのテーマを実施したのをきっかけに、大学院の途中でEMCに研究テーマを鞍替えしました。

そんな経験を経て、トポロジー最適化(※)に出会ったのは、大学院を出て就職した豊田中央研究所でのことです。入所当初はこれまでの専門をいかした設計の業務を担当することになっていたのですが、当時の取締役から「トポロジー最適化を電気分野に応用する研究をしてほしい」と要望があり、それまでまったく知らなかった分野に取り組むことになったのです。その中でトポロジー最適化に関して指導してくださったのが、近藤継男さんという上司でした。トポロジー最適化の原理を初めて説明してくださったとき、非常に面白い方法であったため興味をもちましたし、機械分野のみならず広い応用領域があることに興奮しました。また、その後取り組んだパワー半導体設計への応用は、世界でもまだ例がなく、自分たちの研究が最先端を切り開く可能性があることにもわくわくしました。

※トポロジー最適化 与えられた空間において、強度など必要な性能を満たす構造を計算によって設計する手法。

私がいま研究者・教員として関西学院大学にいるのは、和田先生と近藤さんをはじめとした多くのすばらしい「師」に会えたことが理由です。また、本学に来てからも、新たに国際会議で出会った方と共同研究の話を進めています。自分の進路に大きな影響を与えてくれる出会いが、これからもきっとあるだろうと、楽しみにしています。

Profile

野村 勝也(NOMURA Katsuya)

1985年、兵庫県生まれ。2010年京都大学大学院電気工学専攻修士課程修了。同年、(株)豊田中央研究所入社。電力変換回路におけるEMC設計技術に関する研究、パワーエレクトロニクス分野への構造最適化法の応用に関する研究に主に従事。その間、2017年から大阪大学大学院機械工学専攻博士後期課程に入学、2019年同課程修了。博士(工学)。2021年に関西学院大学工学部 電気電子応用工学課程へ就任。

運営元:関西学院 広報部

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