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人生の嵐を乗り越える方法 |聖書に聞く #13

大宮 有博法学部教授・法学部宗教主事

関西学院のキリスト教関係教員が、聖書の一節を取り上げ、「真に豊かな人生」を生きるヒントをお届けします。

私のこれらの言葉を聞いて行う者は皆、岩の上に自分の家を建てた賢い人に似ている。雨が降り、川が溢れ、風が吹いてその家を襲っても、倒れなかった。

マタイによる福音書7章24節

この数年、西宮上ケ原キャンパスの周りは新築ラッシュです。あちらでもこちらでも新しい家が建てられています。家を建てる時はまず基礎をつくり、次にその上に建物を建てます。家の基礎は、まず家の形に地面を掘って、そこに栗ぐらいの大きさの石を敷いて、鉄筋をはって、そしてコンクリートを流しこみます。一番下に防水シートをしいたり、湿気があがってこないシートをしいたりすることもあります。基礎をつくるだけでいくつもの工程があるそうです。

大きな建物を建てる時は、その基礎づくりの前にもっと大切なことをします。それは地盤調査と改良工事です。ドリルで地面を掘って、その土の中にどれくらいの水分があるか、やわらかい粘土ではないかなどを調べます。そして建物を建てるのに向いていない土地なら、薬を入れたり、杭をいれたりして地盤を改良します。

賢い人は岩の上に家を建てるような人で、愚かな人は砂の上に家を建てるような人だと、イエスは述べています。イエスの時代、家は四角く切った石を積み上げてつくられました。その時に、岩盤層に達するまで地面を掘って、そこから石を積み上げて家を建てれば、雨や嵐、地震にも強い家が出来ます。しかし、手を抜いて、土の上にいきなり石を積んで家を建てれば、ちょっとしたゆれで崩れてしまいます。

では、「私(=イエス)の言葉を聞いて行う者」とは、どのような人のことでしょうか。イエスの教えとは、神はこの世界、そしてそこに生きる私たち人間を真に愛しておられることを覚えなさいというものです。神が私たちを愛しておられるとは、私たちが悩み苦しんでいる時、私たちの傍におられ、その悩み苦しみを誰よりも理解しておられるということです。そして、その教えを聞いて行うとは、そのような神の愛に励まされて、私たちも自分の傍にいる人を大切にするということです。聖書という分厚い本は、そのことを私たちに教えています。

「岩の上に家を建てた賢い人になりなさい」というイエスの言葉は、なぐさめの言葉です。賢い人は、人生を掘り下げてそこに土台をしっかり据えている人のことです。それは学歴のことでも、キャリア(経験)のことでもありません。ましてやどんな風に育てられたかとかでもありません。「岩の上に家を建てた賢い人」は、悲しい時や悩んだ時に、自分が神に(あるいは『誰か』に)大切にされているということに気づく人のことです。そして、神こそが誰も知らない私の悲しみや悩みをよくご存じであることを信じ、隣人を大切にしようとする人のことです。これがイエスの教える人生の嵐の乗り越え方なのです。

Profile

大宮 有博(OMIYA Tomohiro)

大阪府生まれ。関西学院大学大学院神学研究科修了。Graduate Theological UnionやAsbury Theological Seminaryにて学び、London Bible CollegeにてPh.D.取得。現在、関西学院大学法学部教授・宗教主事。著書『アメリカ・キリスト教入門』。訳書『反貧困の神 旧約聖書神学入門』(ノルベルト・ローフィンク著)。

運営元:関西学院 広報部

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