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災害発生後の生活の継続のために、広い視点で防災・減災の知識を|学問への誘い #4

照本 清峰建築学部 教授

世の中には多くの学問分野があります。研究者はどこに魅力を感じてその分野を専門とし、研究するようになったのでしょうか。関西学院の研究者に聞いたところ、専門分野との出会いや、研究のおもしろさを語ってくれました。その言葉に耳を傾けると、新たな世界が広がるかもしれません。

都市や地域の空間的・社会的な構成要素の中から顕在的・潜在的なリスク要因を抽出し、それらの対応に必要な仕組みや取り組みのあり方を検討するとともに実践していくための方策を構築していくための研究を進めています。「減災システム」、「防災まちづくり」「災害復興」といった分野が対象範囲です。

もともとは構造物をつくることに興味があって大学の建設工学科に進学しました。大学入学後にたまたま手に取った書籍が吉村昭の著書『関東大震災』。巨大地震の直後に延焼火災が起こり、首都一帯が過酷な状況に置かれた様子が克明に描かれていました。当時、物的な被害だけでなく、十分に情報が行き渡らなかったことなどによる影響に衝撃を受けました。そして、空間的な仕組みや社会的なシステムにも関心を持つようになりました。

大学2年生だった1993年に北海道南西沖地震が発生。そして大学3年生のときに発生した阪神・淡路大震災。関東に住んでいたため揺れを感じることはありませんでしたが、テレビでは連日、不自由な避難生活を送る人々の苦難が映し出されていました。

それ以降、建物の補強・耐震化などの構造物による対策とともに、住民による防災活動や被災者支援などの対策にも関心が高まりました。大学院では都市科学を専攻。2005年には阪神・淡路大震災の被災地域に設けられた「人と防災未来センター」の研究員になりました。そこで被災者の方々にお話を伺う中で、災害発生後の初動期から復興過程の中での支援方策にも注目するようになり、災害対応の研究も行うようになりました。

研究をする中で、防災・減災対策に対して、行政機関の取り組みはもちろん必要ですが、生活者である読者の皆さんも意識や知識を持っていただくことは大切だと感じます。企業にお勤めの方なら、災害が発生したときにも事業を継続できるような仕組み、これをビジネス・コンティニュイティ・プラン(BCP)と言いますが、BCPを事前に考えておくことはとても重要です。企業等の組織の「これだけは守り、継続させなければならない」という事項に対し、どのような準備をするべきか。今一度きちんと向き合い、見直さなければ、いざというときに対応できないかもしれません。これは仕事に限らず、地域での生活を継続させるという視点でも同じことが言えます。そのためには、防災に関する知識を得ることも大切です。多方面から災害を自分事として捉えて知見を深め、準備につとめていただけたらと思います。

Profile

照本 清峰(TERUMOTO Kiyomine)

関西学院大学建築学部教授。博士(都市科学)。防災科学技術研究所総合防災研究部門特別研究員、和歌山大学防災研究教育センター特任准教授、徳島大学環境防災研究センター特任准教授、人と防災未来センター 研究部研究主幹などを経て現職。主な研究テーマは、「都市・地域の減災性能に関する実践的アプローチを通じた方法論の構築」「災害の復旧・復興過程と支援方策のあり方」「広域巨大災害に関する効果的な災害対応システム」など。

運営元:関西学院 広報部

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