CAREER

現場を離れて改めて実感した、アウトプットの大切さ|大人のための学びの心得 #1

飯田 匡建築学部 准教授

目まぐるしい速さで世の中が変わる今、社会に出てからも学び続けることを意識している方は多いのではないでしょうか。“大人の学び”で得た知見やスキルはキャリアアップだけでなく、これからの日々をより豊かに生きるための糧になるかもしれません。そこで学び続けることを体現する研究者たちに、学びのコツを教えてもらいました。

私が学ぶ上で大切にしているのは、インプットしたらできるだけ早くアウトプットすることです。「いつか使える」と思ってインプットしておいても、実践で使わないといずれ忘れてしまいます。ですから、自分が蓄えた知識をいかにアウトプットしていくのか、常に考えるようにしています。

アウトプットを特に意識するようになったのは、設計の現場を離れてからです。私の専門は建築計画学で、修士・博士課程を修了した後は、建築設計事務所で7年間勤務していました。当時はインプットしたことを日々の仕事で即アウトプットしていたので、その繰り返しでどんどん自分のものになっていくことを実感していました。その後、設計事務所を辞めて大学に戻り、研究の場に身を置いてからは、自ら設計する機会は少なくなりました。でも、自分の研究を単なる机上の理論にはしたくなかったので、すぐに実践する場がなくても、仮想でも設計してアウトプットすることを心がけるようになったのです。

たとえば、新しい技術や設計手法を試したいと思ったら、「もし自宅の設計で取り入れるなら、どこでどんなふうに使えそうか?」とまずは考えてみます。具体的に想像すれば、理解がより深まり、問題点に気づくこともできます。

アウトプットする際は、ただ頭の中でイメージするだけではなく、実際に手を動かしてみることが大切です。私の場合は紙と鉛筆を使って、設計図のラフを描いてみます。時には何十枚も描くこともあります。手を動かして描いてみると、頭の中が整理できますし、描いたものを自分であらためて見ることで、別の視点から捉えられたり、発想がさらに広がったりします。たとえ人に見せなくても、自分の目で見るために、頭の中にあるものをいったん外に出してみることが重要なのです。

そうやってインプットとアウトプットを繰り返し、学びを深めていくことで得られる豊かさは、選択肢が増えることではないかと思います。人間は1日に3万5千回も選択をするといわれています。学びを通して選択肢が増えれば、より良い選択にたどり着きやすくなるのではないでしょうか。

Profile

飯田 匡(IIDA Tadasu)

関西学院大学建築学部建築学科准教授。大阪大学工学部 建築工学科卒業、大阪大学大学院工学研究科にて建築工学専攻博士後期課程修了、博士(工学)、一級建築士。建築設計事務所、大阪大学大学院 工学研究科講師を経て、2021年4月より現職。

運営元:関西学院 広報部

この記事が気になったら、
感想と共にシェアください

  • X(Twitter)
  • Facebook
  • LINE
  • URLをコピー