WELL-BEING

あなたには、将来と希望に満ちた平和な計画がある |聖書に聞く #25

加納 和寛神学部 教授

関西学院のキリスト教関係教員が、聖書の一節を取り上げ、「真に豊かな人生」を生きるヒントをお届けします。

あなたがたのために立てた計画は、私がよく知っている――主の仰せ。それはあなたがたに将来と希望を与える平和の計画であって、災いの計画ではない。

エレミヤ書29章11節

卒業して何年も経った学生から人生相談を受けることが時々あります。最初は「今の会社を辞めようかと思っていて」という話から始まることがほとんどです。しかしよく聞いてみると、実際には仕事だけでなく、両親やパートナーとの関係、これからの自分の家族のあり方など、複数の要素が絡み合って悩んでいることがよくあります。卒業したときに描いていたキャリアプランやライフプランが、後に生じたさまざまな要因で思うように進められなくなっているのかもしれません。

私はそのような相談を受けても、具体的な解決策を提供することはできません。代わりに、話を最後まで聞き、同じような経験を持つ知り合いの話を紹介することが精一杯です。私のところに相談しに来るのは、具体的な解決策を求めているのではなく、心の中の葛藤や苦悩を誰かに聞いてほしい、ということも多いように感じます。他に内面の悩みや不安を打ち明ける相手が思いつかないということもあるかもしれません。私にとっては、キリスト教主義学校の教員をしていることの使命を改めて自覚する機会でもあります。

私の高校時代の同級生は、もともと文章を書くのが得意でしたが、それを仕事にするのは早々にあきらめ、大学卒業後は一般企業に就職しました。いくつかの会社を転々とし、今は地域密着型スーパーマーケットの管理職をしています。その一方で仕事のかたわら趣味で小説を執筆し、インターネットサイトに投稿し続けました。それが出版社の目に留まり、40歳を過ぎてから本が出版されることになりました。小説の中には、会社での経験やそれまで出会った人々との出会いをもとにした作品もあります。こうして現在では数冊の著書と、それを原作としたコミックまで発刊されている兼業のライトノベル作家として充実した毎日を送っています。学生時代には想像もしなかった未来が彼を待っていたのです。

自分で計画を立て、それを実現することができればそれは素晴らしいことです。しかし、もしその通りにいかなくても、人生が終わったわけではありません。聖書は、私たちの計画とは別に、神には神の計画があることを教えています。それは私たちが考えていることよりも、はるかに広く、深いものです。今の自分にはすぐに理解できなくても、神の計画はきっと私たちの人生に予想もしなかった豊かさをもたらしてくれるでしょう。あなたもまた、将来と希望に満ちた神の大きな平和の計画に参加するために、今の歩みがあるのかもしれないのです。

Profile

加納 和寛(KANO Kazuhiro)

同志社大学大学院神学研究科修了、博士(神学)。日本基督教団の教会の伝道師・牧師、ヴッパータール大学博士課程留学を経て現職。専門は近現代キリスト教教理、特にドイツのプロテスタント神学思想。著訳書『アドルフ・フォン・ハルナックにおける「信条」と「教義」』、『神がいるなら、なぜ悪があるのか-現代の神義論』、『苦しみと悪を神学する-神義論入門』、『メソジスト入門-ウェスレーから現代まで』他。

運営元:関西学院 広報部

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