BUSINESS

すべての仕事の基本となる、「情報収集と整理」のコツ|大人のための学びの心得 #4

鈴木 謙介社会学部 教授

目まぐるしい速さで世の中が変わる今、社会に出てからも学び続けることを意識している方は多いのではないでしょうか。“大人の学び”で得た知見やスキルはキャリアアップだけでなく、これからの日々をより豊かに生きるための糧になるかもしれません。そこで学び続けることを体現する研究者たちに、学びのコツを教えてもらいました。

何事においても「情報収集」が必要であることは、皆さんご承知のことと思います。しかし重要なのは、収集した情報を整理すること。つまりは再利用できるデータのストックをつくっておくことが大切なのです。

常日頃、学生にも伝えていますが、レポートを書く段階で検索を始めるのは効率が悪すぎます。授業やニュースで聞いた話は、検索すればすぐに出てくる状態にしておくべきです。

私の場合、ニュースを配信しているWebサイトから、1週間に2000~3000件の記事をザッとチェックし、20本ほどピックアップしてストックしています。その中からさらに6、7本をAIに要約させて「Notion」(※)にまとめることを習慣化。その時々でツールは変わりますが、こういうデータベースを20年近くつくり続けています。慣れれば週に90分もかからない作業です。

※ドキュメント管理、プロジェクト管理、スケジュール管理などを1つにまとめることができるアプリケーション。

情報収集には、多少は「お金をかける」ことが重要だと考えます。とくに最近では、SNSのトレンドとして流れてきた動画でさえ、実はフェイクニュースだったということが増えています。となれば、お金払ってでも裏付けされた情報を掲載するメディアを利用することは、自分の身を守るうえでも重要になってきます。

やはり1紙ぐらいはデータ版の新聞を契約して、ある程度の信頼がおける情報ソースを確保したほうがいい。それらをデータベースの形で管理できるスキルを身につけるだけで、仕事の効率も格段に上がります。

営業の仕事を例に考えてみましょう。たとえば数百社に及ぶ取引先のデータを渡されたとして、営業をかけるのであれば優先度や住所などでデータを整理し、回る順番を決めるだけで効率は大きく変わりますよね。データを管理して活用するクセが身につくと、普段から扱っている業務の情報などに、いかに無駄が多いかも見えてきます。

情報の収集と整理を習慣づければ、情報リテラシーは圧倒的に上がります。流れてきたニュースを断片的に見ていては、どういう流れで出てきた情報なのかわかりませんが、ストックしておくと時系列が見えるようになる。複数の発信元に目を通しておけば、メディアによる傾向も見えてくるのです。

これは訓練しだいで誰でも身につけられるスキルです。経済ニュースなどに興味がなければ、推しや趣味を対象にしていいと思います。自分の好きなものの情報を全方位から収集し、データベースにして管理する。そこから始めてみても、情報を効率的に管理して活用する感覚がつかめるはずです。

Profile

鈴木 謙介(SUZUKI Kensuke)

関西学院大学社会学部教授。国際大学グローバル・コミュニケーション・センター客員研究員、株式会社シタシオンジャパン顧問。専攻は理論社会学。情報化社会の最新の事例研究と、政治哲学を中心とした理論的研究を架橋させながら、独自の社会理論を展開している。2009年に関西学院大学に着任、2024年から現職。『暴走するインターネット―ネット社会に何が起きているか』(イーストプレス)、『カーニヴァル化する社会』(講談社)、『SQ―“かかわり”の知能指数』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『未来を生きるスキル』(角川新書)など、著書多数。

運営元:関西学院 広報部

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