WELL-BEING

合理的でないものにも目を向けたい|学問への誘い #14

森谷 周一商学部 准教授

世の中には多くの学問分野があります。研究者はどこに魅力を感じてその分野を専門とし、研究するようになったのでしょうか。関西学院の研究者に聞いたところ、専門分野との出会いや、研究のおもしろさを語ってくれました。その言葉に耳を傾けると、新たな世界が広がるかもしれません。

みなさんは、思いもしなかったことから学びを得た経験はありませんか。私の場合、研究上のアイデアを得るときは、特定の分野・テーマをがむしゃらに追い求めて出てきたというよりも、端っこの方に落ちていた考え方にヒントを得たり、書店や図書館で何気なく手に取った本が参考になったりしたという経験がたびたびありました。

それらは、目的にあったものを探すという合理的な行動だけなら見つからなかったかもしれません。私は、組織で働く上でも、非合理的な行動に対する寛容さが大切なのではないかと思っています。

バブル崩壊後の「失われた30年」に入って以降、日本経済や企業は悲観的に捉えられてきました。そのひとつの反省として、日本企業が目的に対して合理的な行動を取れていなかったのではないかという意見が見られます。そのため、社会や経済に余裕がなくなっている今、目的に対する合理的な行動を追求するようになっているのです。それは、ともすれば目的を達成するために、必要でないと直感的に感じた情報や知識を排除することになります。そのあり方は、社会として豊かなのでしょうか。

「役に立つ/立たない」の二者択一で、役に立たないと判断されたら、その場でノイズとして処理されてしまう、今はそうした傾向が強いように思います。私は、一見あまり必要でなさそうな情報や知識、学びにこそ、自分の長期的な豊かさや新しい世界に結びつくものが含まれているのではないかと考えています。

情報に対する取捨選択がシビアに求められる情報社会ですが、直感的に「?」と思うものでも、目的に対して合理的でないものでも、少し目を向けてあげる。理想論ではありますが、それが巡り巡って個人・組織・社会の豊かさにつながると思っています。

Profile

森谷 周一(MORITANI Syuuichi)

関西学院大学商学部 准教授。博士(商学)。2017年に関西学院大学商学部助教に着任し、2021年より現職。2023年9月から2025年9月まで、イギリスのマンチェスター大学のビジネススクールに留学。研究分野はミドルマネジメント、経営戦略論、職能別戦略などで、中でも企業の戦略目標達成のために、ミドルマネージャーはどのように貢献しているかを明らかにすることが研究課題。『人間と経営-私たちはどこへ向かうのか』(文眞堂、共著)では、「資源としての人間―人的資源管理論の発展―」について執筆。

運営元:関西学院 広報部

この記事が気になったら、
感想と共にシェアください

  • X(Twitter)
  • Facebook
  • LINE
  • URLをコピー