WELL-BEING

古い価値観を打ち破る力をくれた言葉|研究者たちの人生訓 #6

片寄 晴弘工学部 情報工学課程 教授

私たちの視野を広げ、知識を深め、世界の捉え方を変えてくれる「言葉」。第一線で活躍する研究者に影響を与えたのは、どんな言葉だったのでしょうか。専門分野の偉人や研究者とのエピソードを聞きました。研究者の人生訓は、私たちにとっても真に豊かな人生を築くためのヒントになるかもしれません。

「何をやってもいいんだ」という思いは、僕が若手だった頃、同世代のみんなが抱いていたものだったと思います。それまで主流だった「理工系の研究は役に立つテーマでなければならない」という価値観が変わりはじめた時期でした。そうした時代の変化と僕たち若手の「何をやってもいい」という価値観、そして情報処理領域の人たちの寛容さが、新しいエンタテインメントの創造をめざす「エンタテインメントコンピューティング」の研究領域の誕生につながったのだと思います。

若手の同志が集まって学会を作ったり国際会議を誘致したり、その頃の僕らは、いい意味でも悪い意味でも怖いものなしのエネルギーを持って、突き進んでいました。

当時、僕たちを駆り立てた「何をやってもいいんだ」という気持ちは、今も僕の中にありますから、学生たちにも「自分の好きなこと、自分が楽しいと思うことを追い求めてほしい」と伝えています。もっともこちらの研究室で研究を進める場合は、「エンタテインメントデザインに関係あること」という制約はありますが、これは発表の場を確保するにあたっての制約です。発表をしないとただの自己満足になってしまいます。これは研究に限らず言えることかもしれません。また、学会のように学外の人と交流することは、ネットワークを広げるという点でも大切なことだと思います。

今のご時世、時間や費用を効率よく使うタイパやコスパを重視する考え方が広がりすぎているように感じています。一生懸命取り組んだことは、必ずどこかで生きてくるものです。もちろん、効率化できるところはChatGPTでもどんどん使って進めればよいと思いますが、自分の体験に関わる部分に関しては、自分を鍛えるための投資だと思って、しっかり時間をかけるほうが良いのではないかと感じています。

Profile

片寄 晴弘(KATAYOSE Haruhiro)

関西学院大学工学部情報工学課程 教授。大阪大学基礎工学部制御工学科卒業、同大学院基礎工学研究科物理系制御工学分野で修士課程、応用システム学講座で博士課程を修了。博士(工学)。オージス総研、財団法人イメージ情報科学研究所 研究員、和歌山大学システム工学部 助教授などを経て2002年に関西学院大学に着任、2003年より現職。研究テーマはエンタテインメントコンピューティング、ゲーム情報学、 感情情報処理。

運営元:関西学院 広報部

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