身の回りにあるデザインから「使いやすさ」を考える|大人のための学びの心得 #7
河野 恭之工学部 知能・機械工学課程 教授
目まぐるしい速さで世の中が変わる今、社会に出てからも学び続けることを意識している方は多いのではないでしょうか。“大人の学び”で得た知見やスキルはキャリアアップだけでなく、これからの日々をより豊かに生きるための糧になるかもしれません。そこで学び続けることを体現する研究者たちに、学びのコツを教えてもらいました。
私は「ヒューマンコンピュータインタラクション」という分野を研究しています。簡単にいえば、人が機械とどういう関わり方をすれば、人はより快適で幸せになれるのかを考える学問となります。この研究が扱う領域は、人間の心や体、そして電子・機械工学など多岐にわたるため、幅広い知識が必要です。さらに知識だけでなく、どうすれば人にとって「心地よい」体験となるのか、という感性を鍛えることも大切になります。そして、その体験には、人と機械をつなぐ「ユーザーインターフェース」が大きな役割を果たします。スマートフォンのアプリの画面表示や、銀行ATMのタッチパネルの表示もユーザーインターフェースです。
そこで私が授業で学生たちに勧めているのが、日常生活の中で「ダメなユーザーインターフェース(UI)のデザイン」を見つけることです。街や駅などで「ちょっとこれ、おかしくないか」と感じる標識やデザインを見つけたら、なぜそれが変だと思うのか、どこを改善すれば良いのか考えてみる。そうすると、より良い“関わり方”を考える力を身につけることができます。
たとえば、おしゃれなデザインなのに使い方が一目でわからず、スタッフによる補足説明が必要なセルフサービスのコーヒーマシンや、どっちがどっちかわからないトイレの男性用と女性用を示すアイコン、見るとかえって混乱する駅の案内板など。そんな「BAD UI」の事例が山のようにあるのです。
それと対照的な「GOOD UI」の代表例が、今のJRの自動改札機です。カードの読み取り部分が、少し傾斜していることにお気づきでしょうか。今では誰もがカードをタッチしてゲートを通り抜けますが、実はプロトタイプはタッチするのではなく、カードを「かざす」ことで改札を通ることを想定していました。しかし「かざす方式」では、読み取り部分との距離の問題で5回に1回くらいしか通り抜けに成功しなかったそうです。これではBAD UIです。確実に情報を読み取るために、カードとの接触面を最適な角度に調整したインターフェースとすることで、百発百中で通過してもらえるようにしたのです。
このように、BAD UIを見つけたら「自分ならこう改善する」と考えてみる。その繰り返しは、私たち研究者や技術開発者だけでなく、多くの方にとっても課題解決のスキルを高めてくれるはずです。
Profile
河野 恭之(KONO Yasuyuki)
関西学院大学工学部知能・機械工学課程 教授。博士(工学)。大阪大学基礎工学部卒業、大阪大学大学院基礎工学研究科博士後期課程修了後、株式会社東芝に入社。奈良先端科学技術大学院大学助教授を経て、2007年より関西学院大学理工学部(現、工学部)教授。「体験記録に基づく記憶拡張支援のためのインタラクション技術と実世界センシング技術の開拓」により情報処理学会2021年度フェロー認定。
運営元:関西学院 広報部