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時を知り、かけがえのない今を生きる|聖書に聞く #03

嶺重 淑大学宗教主事、人間福祉学部教授・宗教主事

関西学院のキリスト教関係教員が、聖書の一節を取り上げ、「真に豊かな人生」を生きるヒントをお届けします。

偽善者よ、このように空や地の模様を見分けることは知っているのに、どうして今の時を見分けることを知らないのか。

ルカによる福音書 12章56節

時間に追われる人間。事実、現代人の多くは日々、時間に追われて生活しています。しかし、人間はいつから時間に捉われて生きるようになったのでしょうか。特に近代以降、産業革命が起こって都市が生まれ、工場が作られるようになると、より効率的な生産活動を求めて時間によって労働が管理されるようになり、人々の生活スタイルは大きく変わってきました。そのように私たち人間は、時間を管理することにより、合理的な生活を追い求めてきたわけですが、どうやらそれが最近では少し行き過ぎてしまったようなのです。そして、忙しすぎる現代人は、自分で時間を支配(コントロール)しているようでいて、実際には刻々と時を刻む時計の針に支配されるようになり、かえって貴重な時間を失っているのかもしれません。

あるときイエスは弟子たちにこのように語りました。「あなたがたは雲が西に出ると『にわか雨になる』と言い、南風が吹いていると『暑くなる』と言い、実際にその通りになる」。今日では天気予報は私たちの生活に欠かせないものになりましたが、この言葉からも伺えるように、2000年前の人々も、天候をある程度予測していたようです。しかし、イエスが本当に語りたかったのはこのあとの部分です。「あなたたちは、空や地の模様は見分けられるのに、どうして今の時を見分けられないのか」。

この言葉は、現代に生きる私たちに対しても直接投げかけられているように思えます。古代人よりはるかに優れた知力と技術を手にしたはずの現代人ですが、今の時をしっかりと見分けることができないという点では、古代の人々と何ら変わりありません。事実、私たちにとって本当に価値ある時間は、時計の針では計れない質的な時間なのです。その意味でも、それぞれに与えられている今という時を大切にし、今何をなすべきかをしっかりと見極めなさいと、この言葉は私たちに語っているのです。

今年も11月27日(日)よりクリスマス(主の降誕)を待ち望むアドベント(待降節)の季節に入ります。それぞれがしばし、日常の様々な雑事から離れ、このアドベントの時をしっかりと覚え、クリスマスの時を心から待ち望みつつ過ごしていくことができればと思います。

Profile

嶺重 淑(MINESHIGE Kiyoshi)

早稲田大学第一文学部卒業、関西学院大学神学部卒業、同大学院博士課程前期課程修了、スイス・ベルン大学プロテスタント神学部にてDr. Theol.(神学博士号)取得。日本キリスト教団泉北栂教会担任教師等を経て、現在、関西学院大学人間福祉学部教授(大学宗教主事)。著書『聖書の人間像』、『キリスト教入門』他。