WELL-BEING

喜びと感謝の気持ちで生きる|聖書に聞く #5

李 善惠関西学院宣教師、人間福祉学部教授

関西学院のキリスト教関係教員が、聖書の一節を取り上げ、「真に豊かな人生」を生きるヒントをお届けします。

いつも喜んでいなさい。絶えず祈りなさい。どんなことにも感謝しなさい。これこそ、キリスト・イエスにおいて、神があなたがたに望んでおられることです。

テサロニケの信徒への手紙Ⅰ 5章16~18節

100歳を過ぎても医師を続けた日野原重明(1911~2017)さんが残した言葉の中に、私の心に響いた名言があります。それは、幸せの敷居を低くすると、ちょっとしたことにも喜びが感じられるという言葉です。日野原さんは人からの何気ない親切や思いやりにも心が満たされ、日々たくさんの幸せを感じていると言います。自分は幸せではないと感じている人は、いつも自分と他人を比較しているからであって、幸せは自分の心が決めること。心の豊かさを取り戻すためにも、幸せの敷居を低くする方がいいという教えでした。

キリスト教にはたくさんの重要な教えがありますが、私にとっての重要な教えは「信仰・希望・愛」(コリントの信徒への手紙Ⅰ 13章13節)と今回の聖書箇所にある「喜び・祈り・感謝」です。これは、使徒パウロが彼の伝道によって誕生したテサロニケ教会に送った手紙の内容です。当時のテサロニケは、ローマ帝国のマケドニア州の首都で、貿易で栄えていた大都市でした。テサロニケ教会のキリスト者(クリスチャン)の多くは、ギリシャ人(ユダヤ人の立場からみると異邦人)でした。しかし、使徒パウロの伝道活動に対するテサロニケのユダヤ人たちの妬みは、暴動まで引き起こし、使徒パウロとシラスは、他の地域(べレア)へ移動せざるを得ませんでした。残念ながら、テサロニケ教会が迫害を受けることになったのです。

このような状況の中で、使徒パウロは苦難に陥っているテサロニケ教会の人々の信仰を心配し、彼らのために手紙を書きます。特に、喜ぶときは「いつも」、祈るときは「絶えず」に、感謝するときは「どんなことにも」という条件を付けて語りかけているのです。順風満帆なときは、これは励ましの言葉になりますが、「いつも」「絶えず」「どんなことも」という条件が付くと、結構厳しい要求ではないかと思われます。しかし、使徒パウロは、これこそが神様が望んでおられることであると確信しています。神様に喜ばれる歩みを目指し、周りの状況に影響を受けることなく、自分の心を決めることへの大切さを訴えていると感じられます。

2023年は、幸せの敷居を低くして、日々喜びと感謝の気持ちで生きていきたいです。もし、ため息が出そうになったら、一旦やっているすべてのことを止めます。顔を上げて空をみながら、しばらく肩の力を抜き、息を整え、笑顔を作ってみます。そうすると、前向きの幸せのエネルギーが飛んでくると思うのです。皆様はいかがでしょうか。一緒にやってみませんか。

Profile

李 善惠(LEE Sunhye)

韓国生まれ。2006年に来日し、2007年から同志社大学大学院社会学研究科(前・後期課程)で学ぶ。博士(社会福祉学)。大韓イエスキリスト教長老派(統合)牧師(韓国)。現在、関西学院宣教師、人間福祉学部教授。 著書に、『賀川豊彦の社会福祉実践と思想が韓国に与えた影響とはなにか』(単著)や『自殺をケアするということ-「弱さ」へのまなざしからみえるもの』(共著)などがある。

運営元:関西学院 広報部

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