8ビットパソコンから広がった、未知の世界を切り拓く冒険|人生を豊かにした出会い #10
土方 嘉徳商学部 教授
私たちの人生は出会いにあふれています。みなさんは、どんな出会いが記憶に残っていますか? ここでは「人生を豊かにした出会い」をテーマに、関西学院の研究者のエピソードを紹介します。彼らの出会いや体験から“豊かさ”について考えてみませんか?
8ビットパソコン(PC)とインターネット。この2つが僕の人生に大きく影響した存在です。特に小学5年生の時に父が買ってきてくれた、8ビットPCとの出会いが大きかったと思います。
8ビットPCは、Windows95の登場以前にブームとなったパソコンです。このパソコンには、飛行機を撃ち落とすゲームが入っていたのですが、あまりに簡単でつまらない。「よし、自分で作ろう!」と思い立ったのが、プログラミングを始めたきっかけです。当時はプログラムコードが一般の人も読める環境だったため、その気になればそれらの情報をもとに自由にアレンジができたんですよ。
この体験をきっかけに、本格的にオリジナルのゲームなどを制作するようになり、それをパソコン雑誌に投稿するようになりました。さらに、より本格的なゲームをみんなに楽しんでもらおうと思い、こちらからある企業に声をかけて、フリーのプログラマーのような形で、開発したゲームを販売してもらうようにもなりました。それが高校3年生から大学3年生くらいのことです。
さらに大学3年生の時にインターネットが登場したことが、研究職に進むきっかけとなりました。というのも僕は、高校生の頃から全国のパソコン愛好家と交流をしていたのですが、その方法は実にアナログなものでした。フロッピーディスクというDVD以前の保存媒体に、ハイパーテキストという今のWebの原型となるようなプログラミング言語を記録して、郵送し合うという方法だったんです。
ですから世界中のコンピュータがつながるインターネットができて、その交流メディアとしてWebが公開された時には「これはもう革命だ!」と打ち震えました。その勢いのまま「Webの研究をするぞ」と大学の研究室に入り、IBMへと入社したわけです。その後、もっと自由に研究したいと大学に活動の場を移し、ソーシャルメディアにおける行動心理分析を主な研究対象とする研究者となり、現在に至っています。
とはいえやはり8ビットPCをあれこれ触っていた時代が、僕の原点なのだと思います。今や学校でプログラミングを学べる時代になりましたが、「そんな至れり尽くせりな環境でおもしろい?」とつい思ってしまいます。それは僕自身が教科書も何もないところから、未知の世界を切り拓く楽しさを体験してきたからなんでしょうね。
Profile
土方 嘉徳(HIJIKATA Yoshinori)
1998年大阪大学大学院基礎工学研究科物理系専攻修了課程終修了。同年、日本アイ・ビ-・エム(株)東京基礎研究所入社。Webブラウザでの操作履歴から、ユーザーの興味や嗜好を推定する技術を開発。その後、ユーザーの深層心理に近づきたいと研究者の道へ進み、母校で博士号を取得し大学教員に。2017年より関西学院大学商学部准教授着任、2019年より教授。専門はソーシャルメディア論、社会情報学、社会心理学。
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