これから先は新しい世界。好きに色づけできるのだと、キリスト教が教えてくれた|人生を豊かにした出会い #12
橋本 秀樹生命環境学部 教授
私たちの人生は出会いにあふれています。みなさんは、どんな出会いが記憶に残っていますか? ここでは「人生を豊かにした出会い」をテーマに、関西学院の研究者のエピソードを紹介します。彼らの出会いや体験から“豊かさ”について考えてみませんか?
もともと私は医者になりたくて、大阪大学医学部を受験したんですが叶わず、関西学院大学の理学部に入学しました。現状を消化できずにいたとき、チャペルアワーで経済学部の北村次一先生にお話を伺えたことが、私にとって大きな分岐点でした。北村先生は阪大から関学に移られた先生なのですが、阪大ではいろいろと苦労したものの、関学ではとても充実した日々を過ごしているとおっしゃっていて、こんな偉い先生ですらそうなんだと目から鱗が落ちました。そしてこのチャペルアワーで、「古いものは過ぎ去った、見よ、すべてが新しくなったのである」という新約聖書の一節を知り、世界が開けたような感覚を得たのです。
「自分はダメだ」と思っていると、足し算ではなく引き算でものを考えるようになってしまいます。失敗にこだわり、後ろを向いていてはもったいない。これから先は新しい世界であり、まっさらだから好きに色づけして構わない。この新約聖書の言葉のおかげで、可能性が無限大であるということに初めて気がつきました。キリスト教との出会いによって、アグレッシブに前を向けるようになったことが私の一番の転機です。その年の夏、アメリカに留学した際、大学や学部などの属性に関わらず評価してもらえ、「実力さえあれば、どこででもやっていける」ということがわかったんです。それからは勉学も部活もバイトも積極的に取り組み、新しいことにどんどん挑戦していきました。
人生には「根拠のない自信」が一番大切です。実は教育は、それを育てるために行っているのではないかと思っています。偉そうにしたらいけませんが、「自信をもちなさい」と。キリスト教は、「唯一無二の神様を信じます」というところからスタートします。神様という揺るぎない存在を基準に物事を見ていくので、ブレがありません。失敗しても落ち込むのではなく、何かが違うというメッセージとして真摯に受けとめる。これが私の生き方のベースになっています。聖書は本当に読み飽きません。常に手元に置いていますが、いつ開いても響くことばかりです。
挫折をして人生設計が変わることもありましたが、前を向くことを神様から教えられたと感じています。こうして研究にも没頭した結果、現時点で論文数は460本を超え、「世界のトップ2%の科学者」(スタンフォード大学とエルゼビア社による選出、2023)にも選んでもらいました。これまでを振り返ってみても、自分は新しいことをするために生まれてきたのだと感じています。
Profile
橋本 秀樹(HASHIMOTO Hideki)
関西学院大学生命環境学部環境応用化学科教授。理学博士。1990年、関西学院大学理学研究科化学専攻 博士課程修了。大阪市立大学(現・大阪公立大学)工学部助手、静岡大学工学部助教授、グラスゴー大学客員准教授、大阪市立大学大学院理学研究科教授などを経て、2015年、関西学院大学に着任。研究テーマは、人工光合成、超高速レーザー分光、カロテノイドなど。光合成初期過程に重要な役割を果たすカロテノイド色素に注目し、人工光合成による次世代燃料の生成に関する応用研究にも取り組んでいる。
運営元:関西学院 広報部