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間違いを恐れず、仮説が外れることを楽しむ|学問への誘い #5

関 由行生命環境学部 教授

世の中には多くの学問分野があります。研究者はどこに魅力を感じてその分野を専門とし、研究するようになったのでしょうか。関西学院の研究者に聞いたところ、専門分野との出会いや、研究のおもしろさを語ってくれました。その言葉に耳を傾けると、新たな世界が広がるかもしれません。

ヒトをはじめとする生き物がどのように誕生したかを知りたいと考え、進化と生殖細胞をテーマに研究しています。厳密にいうと進化については、再現ができないことから完全に解明はできないのですが、自分の仮説が正しいかどうかなど、日々研究を深めています。実は、研究者で進化と生殖細胞をテーマにしている人はあまりいません。言うなればそれは、競争しなくても良いということ。競争することは“自分が取り組まなくても良い”とも捉えられ、自分でなければできないことをしたいし、しなければと思っています。

細胞が相手なので世話は大変です。でも、夜中に一人で実験をしているときに、「あぁ、幸せだな」と感じることがあります。自分にしかできないことをして、世界で初めての現象を見ることができる。知り合いの研究者が顕微鏡で細胞を覗きながら「キレイだよー、最高だよー」と一人でしゃべっていたことがありましたが、それだけ細胞は美しい。見ていて感動します。

研究を続けてきて変わったのは、ミスや間違いが怖くなくなったこと。ミスしたら何がダメだったかを考える、間違ったら何が正しかったかを考えればよい。そう思うようになったら生きるのもラクになりました。

そもそも仮説が10あったら、そのうち9つはだいたい外れるものです。それは、9つの仮説について除外できた、もう検証しなくてよいということ。学生には良い結果をつい求めがちですが、必要なのはよい結果ではなく“正しい結果”です。グレーな状態で一つの仮説を深掘りし続けると、「結局ウソだった」となり得ます。

そのため、仮説を立て研究を始めるときには、最初の入り口を「ウソじゃないか?」と批判的に見るようにしています。そして、絶対にこれが正しいとなったときに、まっすぐ前に進むようにしています。これは研究者だけでなく、読者の皆さんの日常にも通じることではないでしょうか。

Profile

関 由行(SEKI Yoshiyuki)

関西学院大学生命環境学部生命医科学科教授。博士(医学)。大阪大学大学院修了。研究分野はエピジェネティクス、生殖細胞生物学、幹細胞生物学。2009年4月に関西学院大学理工学部専任講師に着任、2021年4月から現職。「始原生殖細胞によるエピゲノムリプログラミング機構に関する研究」で2018年度日本遺伝学会奨励賞受賞。

運営元:関西学院 広報部

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