CAREER

世界の広さを見るきっかけを与え、自分の人生を変えてくれた恩師|人生を豊かにした出会い #4

長友 淳国際学部 教授

私たちの人生は出会いにあふれています。みなさんは、どんな出会いが記憶に残っていますか? ここでは「人生を豊かにした出会い」をテーマに、関西学院の研究者のエピソードを紹介します。彼らの出会いや体験から“豊かさ”について考えてみませんか?

僕の人生に多大な影響を与えてくれたのが、大学1年生の英語の先生だったチャーリーというアメリカ人です。最初の授業で学生一人ひとりを教壇に立たせ、「いつもの景色が違って見えるだろう」と言われました。これは、僕が大好きだった映画『いまを生きる』の一場面とまったく同じだったんですね。それにすぐ気づき、衝撃を受けました。『いまを生きる』は、生徒たちに影響を与える高校教師の物語なんですが、実は映画製作が専門だったチャーリーから「あの映画の製作に関わっていた」と自己紹介され、運命的なものを感じました。

チャーリーの授業はどれも規格外でした。テキストブックの英語は駄目だと、型破りな内容ばかりで、笑いの絶えないクラスでした。「ミーティングはすべて英語でやれ」と言われて出店した学園祭での生演奏カフェは、結果、大失敗でしたが、「学生時代は失敗が許されるからいいんだ。むしろそれから学ぶことが大事だ」と語ってくれました。常々「問題は、英語を知らないことじゃない。知っている英語を使えないことだ」と指摘されていたので、ジャパニーズアクセントの受験英語しか身についていませんでしたが、ツールとして英語を話すという、開き直りを得られたのも大きかったです。

チャーリーがよく言っていたのが、「熱く生きろ」という言葉です。「人生で時間と金が両方あるときはそんなにない。学生時代は金がなくても時間はある。だから借金をしてでも旅に出ろ」と力説されました。それに刺激され、長期休暇のたび貧乏旅行に出て、訪れた国は15カ国以上にも。アメリカでは現地で4万円ほどの車を買い、寝袋で周遊。ときどきLAのチャーリーの家に立ち寄ったことも思い出に残っています。海外には、こんなにもいろんな人がいて、いろんな暮らしがあり、いろんな文化があるんだと肌で感じられた経験は、今も大きな財産です。

大学4年次に進学か就職かで悩んだときも、チャーリーに相談しました。すると「何を止まっているんだ、悩んでいるときは両方やれ」と、一歩踏みだす勇気をもらいました。いくつかの内定を得て、進学はいつでもできると考え就職を選択。その後、自分の人生で何を大事にしたいか考えた結果、研究の道に戻る決断をしました。悩みや困難があっても、常に前へ前へと進むことができたのは、チャーリーのおかげかもしれません。学生の話に耳を傾け、悩みに寄り添い、いつも刺激を与えてくれたチャーリー。一言一言が響く、自分の人生を変えてくれた存在でした。

Profile

長友 淳(NAGATOMO Jun)

関西学院大学 国際学部 教授。電力会社勤務を経て、文学修士(国際文化)、社会学博士(Ph.D./クイーンズランド大学大学院)を取得。2010年に関西学院大学に着任。2018年より現職。主な研究テーマは、現代オーストラリアへの日本人移住者の移住プロセスおよび定住プロセス、ライフスタイル価値観の変化と移住のつながり、島根県隠岐郡海士町をはじめとするIターン移住、など。主な著書に、『日本社会を「逃れる」―オーストラリアへのライフスタイル移住』(彩流社)、『グローバル化時代の文化・社会を学ぶ――文化人類学/社会学の新しい基礎教養』(世界思想社)など。

運営元:関西学院 広報部

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